【いま、求められる人材】アジアにおける人材育成★アジアを代表する教育の国シンガポール
こんにちは!富士通ラーニングメディア・ソリューション本部の岨下(そわした)です。
ベトナム・シンガポール・フィリピン、アジア3ヶ国における人材育成の現状について、4回にわたってお届けしております。
第3回目となる今回は、シンガポールの教育の現状をレポート。
ビジネス都市として、すでに完成形に近づいているシンガポールでは、子どもたちに向けてどんな教育がおこなわれているのでしょうか。
非常に興味深い事例に、たくさん出合うことができましたので、ご紹介させてください。
<国家ビジョンとして掲げる人材育成>
国土が小さく、物資も少ないシンガポールでは、人材こそ財産であると考え、その育成のために力を注いでいます。
軍事費に匹敵するほどの膨大な予算をかけ、国家をあげて人材を育成。
優秀な人材こそが、地域を活性化させ、さらには国を発展させることにつながると考えているのです。
そんななか、国家ビジョンとして掲げているのが「マスタープラン」。
ICT(情報通信技術)を活用した教育により、21世紀に求められる能力を子どもたちに定着。
優秀な人材を育成することを目的として、1997年に制定されました。
<近未来型の学校の形、フューチャースクール>
マスタープラン政策の1つとして、シンガポールの教育省と情報通信開発庁が共同で立ち上げたプログラムが「フューチャースクール」です。
全国に、約300校ある学校のうち12校をフューチャースクールと認定。
指定期間の4~5年で、1学校に対し3ミリオンシンガポールドル(約2億円)もの予算を投じ、特色あるICT教育をおこなっています。
予算を使った取り組みは、まずインフラ基盤の整備からスタート。
場合によっては、学校を建築するところからスタートすることもあります。
学内では、生徒の3~4名ごとに1台のPCを準備。
インターネットを完備し、学校内のどこでもICT教育がおこなえる環境を整えています。
<新しい学びスタイル協働学習>
インフラ整備が整ったあとに重要となってくるのが学習方法。
2009年よりスタートした3フェーズめのマスタープランでは、ICTを効果的に活用し、自律的かつ協働的な学習能力を重視した取り組みを推進しています。
まず、教師が生徒に対して一方的に教える受け身型の教育方法を排除。
生徒は、ICTを通じて、自ら学ぶ方法を身に付けます。
授業中に、PC上に設問が出題されることが多いのですが、わからない単語が出てきたらインターネットで検索するなどして答えを見つけます。
家庭では、ノートPCやタブレットPCを活用して宿題を提出したり、わからない点は、オンライン上で教師とつながって解決していきます。
さらに、他の生徒と知識や見解を共有することが、協働学習の重要なポイント。
生徒同士が、オンライン上で互いの考え方を説明し合ったり、学習の成果物を公開し合ったりしており、さまざまな場面において協働学習に取り組む姿勢が確立されていました。
<最新鋭のICT機材が設置された教室>
フューチャースクール認定校の1つ、生徒数約1500人の義安(ニーヤン)中学校を訪れました。
多くの教室で使われていたのは電子ホワイトボード。
その他にも、全面がスクリーンで、好きな場所にプロジェクタの映像を映し出すことができる教室があったり、
写真やビデオを生徒自らが編集できるコンピューターグラフィック編集室があったりと、各教室に先進のICT機材が揃っています。
教室の内装に至るまで、多くの経費が使われており、「こんな教室で学習したら楽しそう!」という印象を受けました。
また、ICT活用のためソーシャルメディアの使用を積極的に推進。
アメリカの某大手IT企業からは教育ラボとして認定されており、資金援助も受けています。
<スマートフォンで自主学習>
同じく、フューチャースクールに認定されている南僑(ナンチャオ)小学校。
国立教育学院(NIE)から認定された唯一の研究校で、校内には専用の研究室が設けられています。
全校生徒約1900人のうち、90%ほどを中国系の生徒が占めています。
ナンチャオ小学校の特徴は、スマートフォンによる自主学習。
宿題のテーマが「中国のことわざ」であれば、児童たちは、スマートフォンを自宅に持ち帰り、家族の写真を撮ります。
さらに、その写真に見合ったことわざを考え、中国語で説明します。自分で撮った写真・ことわざ・中国語での説明をwiki(複数人が共同で構築していくWebコンテンツ)にアップロード。
学校の授業で、教師や他の児童と宿題を共有しながら、中国語で議論するという、協働学習をおこなっていました。
科学の授業では、スマートフォン上にスケッチを描かせる場面も。
スケッチを描かせることにより、児童たちは、ひとりひとり、まったく違ったプロセスで回答を導き出します。
教師は、文字が書けない児童でも、理解の度合いを把握しやすくなるのです。
中国語の授業にしても、科学の授業にしても、スマートフォンを活用した学習に共通していたのは、児童たちが自らの力で学ぶというスタイル。
ICTへの取り組みは、教師から指示されなくても、自主学習や協働学習を経て、自発的に学べる子どもたちを育てているのです。
<小学生のプレゼン能力>
フューチャースクールに認定されているのは12校のみというお話しをしましたが、実は一般校との違いはそんなに大きくはありません。
国を挙げたマスタープランによってICT活用を推進しているので、一般校においても積極的な取り組みがおこなわれているのです。
一般校である、啓北(チーホア)小学校の理科の授業でおこなわれていたのは、「地球温暖化」をテーマにしたディベートです。
児童たちは、1人1台のノートパソコンを持って、授業に参加。クラス全体が2チームに分かれ、各チームの代表者3名が、討論者として壇上にあがりました。
討論者は、パワーポイント等を使ってプレゼンテーションを繰り広げるのですが、聴衆役となっている児童たちも、ただ討論を聞いているだけではありません。
自分のチームを勝たせるために、有用な情報をパソコンで調べ、討論者のパソコンに送信。
討論者は、それを即座に汲み取って、さらなる討論を展開します。
日本では私たち社会人が使うイメージの強いパワーポイントも、シンガポールでは子どもの学習ツールの1つなんですね。
教師から生徒へ教えるという、一方的な教育方法では、知識も見解も大きな広がりを期待できません。
しかし、協働学習という仕組みを活用すれば、個人の知識や見解を、何倍にも大きく広げることができるのです。
<次世代の人材を育成するために>
今回の視察を通じて感じたのが、国をあげて優秀な人材を育成しようというシンガポールの強い意気込み。
少数精鋭で、次世代のリーダーを育てたいという熱いパワーがみなぎっていました。
小学校時代から、過当競争の中にあり、ハードな教育プログラムを課せられるシンガポールの子どもたち。
勉強に熱心に取り組む姿を見ていると、我こそが次世代のリーダーになるのだという意識が、すでに身に付いているように感じました。
日本の教育にもICT教育が取り入れられてきたとは言え、その発展のスピードはシンガポールとは比較できないほど緩やかです。
しかし、一方で、日本でも教育のICT化の動きは確実に歩みを進めています。
シンガポールのICT教育に感化された原口元総務大臣が、「ICTを使ったヒューマンニューディール」事業を提案。平成22年度には、総務省予算として10億円が計上されました。
また、同じく平成22年には、日本においてのフューチャースクール事業が小学校10校にてスタートしています。
平成23年度には中学校や特別支援学校にも拡大するとの見通しとなっており、今後の日本の教育分野において、シンガポールは大きなモデルケースとなってくるでしょう。
これから日本の企業がシンガポールに進出しようとするときに大切なのは、シンガポール国民が持っている「グローバル化」の概念に、私たちがどれだけ近づけるかではないでしょうか。
多民族国家であるシンガポールでは、英語はもちろん、2~3ヶ国語が話せて当たり前という風潮があります。
日本にも、ICT教育の推進とともに、語学学習についてのさらなる取り組みが求められてくるのかもしれません。
当社でも、従来の受け身型ではなく、1対1のパーソナルな教育でもない、新しいスタイルの協働学習を模索中。
すでに、当社の「Learning Management System(LMS):学習管理システム」であるKnowledgeC@feをベースにしたクラウド型の人材育成を推進しています。
これからグローバルなビジネス展開を目指す日本にとって、企業の人材育成はもちろん、子どものたちの学習面においても、これまでのスタイルにとらわれない新しい教育の形が求められているのではないかと感じています。
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